VOICE

空に浮かぶ光のリビング
松本市/A邸 家族構成/4人

STORY



表を通り過ぎる人が
思わず足をとめて見上げてしまう
ぽっかりと空に浮いたような、光の箱。
そのあたたかな光に包まれて、
家族の日常が、今日も穏やかに育まれている。

  • リビングの天井高はご覧のとおりのスケール!
    ここは晴れた日にはアルプスの山々を望む特等席。
    ブラインドも設置しているが、ほとんど下ろす必要がないのだそう。

  • 仕切りのないワンルームはゆったりとして、ベビーベッドを置いても余裕の広さ。
    キッチンの奥には窓があり、夏場の風通しもいい。

デメリットをメリットに変え、空間に驚きとゆとりをもたらす

松本平にゆっくりと夜のとばりが降り始める頃。住宅地のなかに、ポッと一つ、光の箱が浮かび上がります。スクエアの窓枠を通して漏れるオレンジ色のあたたかな光。支える1階の壁が黒く、上部が前にせり出したつくりのため、明かりの灯る空間だけがまるで空に浮かんでいるよう。設計担当の更級氏が「ぜひ夕暮れ時に見に来てほしい」と言っていた訳がわかりました。
松本市内の大手精密機器メーカーに勤めるAさんとそのご家族。新規分譲されるのを機に購入した土地は、敷地もゆったりとして条件的には恵まれていましたが、ただ一つ制約が。それは、通りに接する面が北になってしまうこと。いくつかのメーカーを見て回った後、デザイン性で最も惹かれた更級圭建築設計に依頼することを決めますが、プランづくりの要になったのはやはり、北側の面をどうするかということでした。

「家族の居場所の中心となるリビングは、当然ながら日の差し込む明るい場所にしたいですよね。この敷地の場合、南側にはすぐお隣の家もあり、大きな開口を設けるのが難しい。広く開いた北側にリビングを設ける、となった時に思いついたのが、リビングを2階に上げて“浮かばせる”方法でした」と更級氏。
この浮かぶリビング。外から見た美しさだけでなく、実際に室内に入ってみるとその効果を実感できます。階段を上ると正面には、キッチンからリビングへと連なる奥行きのある大空間が。視線の先には、カーテンで遮る必要のない窓一面の悠々とした眺め。天井の勾配が奥に向かって緩やかに上がっていることも、視覚的な広がりを増しています。
2階にリビングをもって行くことで、Aさんのたっての希望である「ゆったりとしたガレージ」と「シアタールーム」も、1階に収まりよく配置できることに。
「車2台の駐車スペースと、作業スペースも取れる広いガレージと、大音量でも気兼ねなく映画が観られる部屋がほしかったんです。更級さんのプランニングのおかげで、〝男の夢〟がどちらも叶ってしまいました」とご主人。
デメリットとされる弱点をメリットに変え、高いデザイン力で空間に驚きとゆとりをプラスする。若い世代を中心に圧倒的な支持を集める建築家の手腕を、また一つ実感する住まいとの出合いとなりました。

  • 中は明るい日の光を取り込み、夜には暗闇に浮かぶ光のスペースとなるA邸のリビング。「開口部を大きくすることに消極的な方もいらっしゃいますが、Aさんは意図を理解して一緒に面白がってくれた。だからこそできたスペースです」と更級氏。

     

    部屋の一部として見ても違和感のない、シックな洗面スペース。寝室とサニタリーが近く、洗濯物を干すデッキバルコニーへはサニタリーと寝室の双方から出入りできるので便利。
    周りと寝室を2階に配置したため、生活のほとんどの時間を2階で過ごせる。小さいお子さんのいるご夫妻にとっては、その暮らしやすさが何よりありがたい。

  • 中は明るい日の光を取り込み、夜には暗闇に浮かぶ光のスペースとなるA邸のリビング。「開口部を大きくすることに消極的な方もいらっしゃいますが、Aさんは意図を理解して一緒に面白がってくれた。だからこそできたスペースです」と更級氏。

     

    中は明るい日の光を取り込み、夜には暗闇に浮かぶ光のスペースとなるA邸のリビング。「開口部を大きくすることに消極的な方もいらっしゃいますが、Aさんは意図を理解して一緒に面白がってくれた。だからこそできたスペースです」と更級氏。
    ご主人の念願だったシアタールーム。天井には吸音材を、壁にはグラスウールを敷き込み、専用の扉を取り付けたので防音は完璧。「今はまだ仕事が忙しく、ほとんど娘がアニメを見るための部屋になっています(笑)」

PLAN

設計のポイント

北向きという土地の制限を魅力に変えられるよう、外から浮かんだように見えるリビングを設計しました。また、建物と一体になるガレージや本格的な防音機能を備えたシアタールームといったご主人からのリクエストにも応えつつ、永遠に飽きのこない家づくりを目指しています。

DATA

敷地面積 ・・・・・・・235.91㎡(71.36坪)
延床面積 ・・・・・・・167.60㎡(50.70坪)
1F面積 ・・・・・・・96.26㎡(29.12坪)
2F面積 ・・・・・・・71.34㎡(21.58坪)

工法/木造在来軸組工法 基礎/ベタ基礎 構造材/ヒノキ、スギ、米マツ 断熱材/天井:セルロースファイバー吹き込み300㎜、壁:高性能グラスウール100㎜、床:基礎断熱仕様 主な外装仕上げ/屋根:ガルバリウム鋼板、外壁:ガルバリウム鋼板・一部吹き付け塗装仕上げ・ウエスタンレッドシダー羽目板張り 主な内装仕上げ/天井・壁:クロス、床:ナラ無垢材 オスモクリア塗装仕上げ 開口部/樹脂製複層ガラスサッシ

●著作権について
このページに記載されている記事本文、写真等は「住まいNET信州」VOL.28より転載しています。 こちらの情報の著作権は、住まいづくりデザインセンター信州に帰属します。