VOICE

中庭を生み出した斜めのライン
須坂市/H邸 家族構成/3人

STORY


さまざまな家の建て方があるなかで、
建築家に設計を依頼する、そのいちばんのメリットはなんでしょうか。
答えは一つではありませんが、
例えば、既存の常識にとらわれない土地の生かし方ができるというのも、
その答えの一つかもしれません。


デメリットを逆手に取り、望みを叶えるプランニング

区画分けされた分譲地。Kさん夫妻が入手したのは、最後の一区画。敷地や環境面では申し分なかったが、あいにく南側には建物が隣接し、開けた眺望は望めない。それでも、デッキや庭のある暮らしを諦めたくなかったKさんに建築家が提案したのが、建物を斜めに切り取り、それにより生まれたスペースに三角形の中庭とデッキコートを組み込むという手法。
この斜めのラインは、中庭を生み出しただけでなく、室内にも視覚的な広がりを与え、カットされた面積を補って余りある効果をもたらした。一石二鳥どころか、まるで魔法のようである。

「図面を見た時は、不思議な形だなあという印象しかなかったのですが、実際に暮らしてみたら違和感もなく室内は広々。デッキコートは縁側のようにも使え、バスルームからの眺めは家というよりまるで別荘にいるみたいだねと話しているんです」と、Kさん夫妻。
奥行きの生まれた室内に色を添えるのは、古い物が好きという奥様こだわりの古道具やミッドセンチュリーの家具・小物。バーチ材にウォールナット塗装を施したユーズド感漂う床や、古い扉をイメージしてオリジナル製作した大きなガラス戸、内装の一部に使用したモスグリーンやブルーグレーのカラーリングなどのアクセントが、奥様好みのインテリアテイストをより印象的に引き立てている。
「土地の形状や周囲との関係性など、条件的にデメリットやハンデが大きいほど建築家は燃えますから(笑)、逆に面白いプランが生まれる可能性があるんですよ」と設計を担当した更級氏。世界に一つの住まいづくりを愉しむには、やはり建築家とのセッションが鍵であるようだ。

  • 吹き抜けのある2階は、L字型に寝室や子供部屋を配置。収納スペースもたっぷりと。

     

    玄関とLDKの間には、奥様からのリクエストで、レトロなガラスをはめこんだ天井高いっぱいの大きな引き戸を製作。
    台形のリビング。斜めの壁に沿って設えた階段が、空間を邪魔せずアクセントになっている。

  • 吹き抜けのある2階は、L字型に寝室や子供部屋を配置。収納スペースもたっぷりと。

     

    吹き抜けのある2階は、L字型に寝室や子供部屋を配置。収納スペースもたっぷりと。
    バスルームから見るデッキコート。目隠しがあるため、日中でも窓を開け放して入浴することが可能。冬は雪見風呂に!

PLAN

設計のポイント

隣地との関係性を考慮しながら、お施主さんのリクエストである中庭やウッドデッキを取り入れ、視線を気にせずいかに空間を広く取れるかを考えてプランニングしました。空間を斜めに切り取ることは、一見スペースがもったいないように見えるのですが、実際にその場に立ってみると、視覚的な広がりがもたらすゆとりを実感してもらえるかと思います。空間全体はシンプルに。色みを抑えたり、部分的に挿し色を足したり、オリジナル造作家具を加えたりすることで、お施主様が暮らしながらインテリアを楽しめるよう配慮しました。

DATA

敷地面積 ・・・・・・・251.59㎡ (75.95坪)
延床面積 ・・・・・・・150.32㎡ (45.38坪)※ガレージ含む
1F面積 ・・・・・・・95.88㎡ (28.95坪)
2F面積 ・・・・・・・54.44㎡ (16.44坪)

工法/木造在来軸組工法 基礎/ベタ基礎 構造材/柱:スギ、梁:米マツ、土台:ヒノキ 断熱材/天井:セルロースファイバー230㎜、壁:高性能グラスウール105㎜、床:基礎断熱 ポリスチレンフォーム保温板50㎜ 主な外装仕上げ/屋根:ガルバリウム鋼板タテハゼ葺き、外壁:窯業系無塗装サイディング下地・吹付塗装仕上げ・一部ガルバリウム鋼板 主な内装仕上げ/天井・壁:クロス、床:バーチ無垢材・着色塗装 開口部/樹脂Low-E複合サッシ キッチン/TOYO Kitchen & Living

●著作権について
このページに記載されている記事本文、写真等は「住まいNET信州」VOL.30より転載しています。 こちらの情報の著作権は、住まいづくりデザインセンター信州に帰属します。