VOICE

中庭が開放感を生み出す家
須坂市/I邸 家族構成/4人

STORY

アプローチの奥に現れたのは、真っ白な壁とガレージが一体化した特徴的なファサード。美術館かギャラリーのようにも見える、すっきりとしたシャープなフォルムが、閑静な住宅地のなかでひときわ存在感を放っています。
シンボルツリーの植えられたコンクリート打ち放しのコートを抜け玄関へ。屋内に入るとまず目に飛び込んでくるのが、冒頭の《空中階段》です。壁面内に強度をもたせることで、踏面のサイドに壁や支えを付けず、一段一段を宙に浮いたように独立させることが可能に。通常、住宅の構造のうちの一つの要素でしかない「階段」を、これだけ印象的な美しい意匠へと変化させることができるのも、建築家によるオリジナル設計ならでは。 「いわゆる住宅らしい住宅にはしたくなかった」と話すご主人のIさん。
車や家電など身の回りのモノを見るだけでもデザインに対する感度の高さがうかがえますが、それだけに、住まいのイメージを形にするまでには紆余曲折もあったそう。 「建築は芸術作品だと考えていて。暮らしやすさは当然必要ですが、それを踏まえた上でデザイン性や芸術性の感じられる家にしたい。大手メーカーさんと話してもそこをなかなか共有できなかったんですが、更級さんならデザイン性と暮らしやすさの両立が叶うと直感しました」

  • ビルトイン・ガレージとつながる中庭(コート)部分は、目隠しで囲われているため プライバシーをしっかり確保。
    室内リビングからシンボルツリーの緑が楽しめる。

  • オープンキッチンとダイニングテーブルを壁に沿って斜めに配置することで、
    空間のゆとりと視覚的な広がりを生んでいる。

土地を生かした奥行き感と開放感

I邸が立つのは、背後に小川が流れる台形の土地。土地の形状も不安だったと話すIさんですが、「そこは全く問題ありません。むしろ真四角でなかったり多少のデメリット要素があるほうが、逆手にとった面白いプランにつながります」と設計した更級氏。
今回のケースでは、斜めになるラインに合わせてリビングスペースを配置。入り口から奥に向かって間口が広がることで、空間に数字以上の奥行きと開放感が生まれています。オープンキッチンもインテリアの一つと捉え、見せる・見せないのメリハリを効かせて生活感を抑えつつ機能性も高めています。
外観を見てもわかるように、開口部の少ないI邸。リビングの主要な窓も中庭に向いた1枚のみ。「図面を見たときは窓が少なくて日当たりは大丈夫かなと思いましたが、出来上がってみたらこんなに明るくてビックリです」と奥様。開口部の設計について更級氏は「I邸のように南側に隣家がある場合でも心配ありません。窓自体の面積が小さくても、ガレージや中庭との関係性を生かせば、採光や通風はもちろん、眺めでも満足感を得ることは十分可能です」と話します。
デザイン力が暮らしをさらに豊かなものにするということを、I邸は教えてくれました。

  • キッチン背面の扉付き収納が日常の細々としたものをすべてカバー。上部にはライトが備えつけられ間接照明としての役割も。

     

    バルミューダのトースターや炊飯器、ラッセルホフのケトルなど、家電もデザイン性に優れたもので統一されている。の家具工房にオーダーしたテーブルが、温もりを添えるダイニングキッチン。収納やカウンターも、木目×ホワイトでナチュラルにコーディネート
    フローリングと造作家具のほかはモノトーンでコーディネートされた1階フロア。落ち着いた印象のなかに温かみも感じられる。

  • キッチン背面の扉付き収納が日常の細々としたものをすべてカバー。上部にはライトが備えつけられ間接照明としての役割も。

     

    キッチン背面の扉付き収納が日常の細々としたものをすべてカバー。上部にはライトが備えつけられ間接照明としての役割も。
    白を基調に落ち着いたトーンで設えたサニタリー。デッキバルコニーにも直接出ることができ、洗濯などの家事動線も考え抜かれている。

  • いくつものキューブが重なったように見える外観。外から中の間取りが想像できないところが更級氏の建築スタイル!

PLAN

設計のポイント

敷地を効果的に生かしきることを意識しながら、形、デザイン、機能性のすべてにこだわって設計を行いました。家づくりの考えを一つ一つ積み重ねていったことで、全体として美しく飽きのこない仕上がりになったと思います。

DATA

敷地面積 ・・・・・・・212.33㎡ (64.10坪)
延床面積 ・・・・・・・165.19㎡ (49.87坪)
1F面積 ・・・・・・・103.09㎡ (31.12坪)
2F面積 ・・・・・・・62.10㎡ (18.75坪)

工法/木造在来軸組工法 基礎/ベタ基礎 構造材/柱:スギ、梁:米マツ、土台:ヒノキ 断熱材/天井:セルロースファイバー吹込270㎜、壁:高性能グラスウール105㎜、床:基礎断熱ポリスチレンフォーム保温板50㎜ 主な外装仕上げ/屋根:ガルバリウム鋼板 タテハゼ葺き、外壁:ホワイトモルタル左官仕上げ・ハードナー塗布、一部ガルバリウム鋼板 主な内装仕上げ/天井・壁:クロス、床:オーク無垢材・オスモ塗装 開口部/樹脂窓(Low-E) キッチン/トーヨーキッチン&リビング キッチン熱源/IHクッキングヒーター 暖房の種類/寒冷地用暖房エアコン

●著作権について
このページに記載されている記事本文、写真等は「住まいNET信州」VOL.33より転載しています。 こちらの情報の著作権は、住まいづくりデザインセンター信州に帰属します。