ARCHITECT LEGACY

住まう人の「個性」を引き出す家 長野市/Y邸 家族構成/2人
▲ 2階廊下から見おろすリビングキッチン。片屋根を生かした大胆な吹き抜けは、室内に開放的な広がりをもたらすだけでなく、視点を変えることで日常にかすかなドラマ性を与えている。
大胆に切り抜かれた躍動感ある空間。光と影の織りなす鮮やかなコントラスト。
住むほどに肌に馴染む質感の心地よさー。これらはすべて、「安らぎと落ち着きを感じることのできる場所を」という住まい手のただ一つの願いから建築家が描き起こしたもの。いっそすべてを建築家に委ねてみる、その醍醐味がこの家に詰め込まれている。

信頼し、任せることで生まれる最良の空間

 Y邸の美しさの秘訣は、不要なものを削ぎ落とした上で、あえて贅沢に空間にゆとりと遊びをもたせた点にある。
 片流れの屋根の形状を生かしながら、1階リビングのほとんどを大胆な吹き抜けに。縁台のある庭からリビング・キッチン、そして2階スペースまでが一つの空間として連続性をもち、風の通り道にもなっている。
 継ぎ目や縁のない真っ白な壁と天井は、昼間の自然光や夜の間接照明の光によって、季節ごと、時間ごとに刻々と表情を変え、光と影のコントラストが室内に柔らかなアクセントを添えている。
▲ 墨色塗装をしたカラマツの無垢の床材。光が当たることでエッジが美しく浮かび上がる白を基調とした内装。シャープな空間に、フィリップ・スタルクなどの有機的なデザイン家具が見事に映える。
安らぎと落ち着き、そこにかすかなドラマが同居する
▲玄関の先、手洗いにつながる廊下は、家族愛用のピアノを置けるよう広さにゆとりをもたせた。高い天井と窓からの光がギャラリーのような趣を感じさせるくつろぎのスペース。
▲ 階段幅は広くし、その下にゆったりとした収納スペースを設けた。
▲ 冷蔵庫や食器棚などはすべて天井高一面の引き戸式収納の中に。シナの目地張りの扉も絵のように美しい。 
安らぎと落ち着きのある空間に……とのYさんの要望に対して、リビングに接してつくられた和室には、間仕切りに変わり格子の透け扉を用い、視線や空気の流れを完全には遮らず、洋室との一体感が損なわれないよう配慮されている。また、リビングの一角に3畳ほどの小上がりを設け、ちょっとした時間にゴロリとなって休めるような、遊び心ある仕掛けを用意した。
 設計に際して、あれこれと口を挟むことはしなかった、というYさん。「家は建築家さんの作品でもある。素人が横やりをいれてしまったら良いものにならない」
 その言葉に対し「のびのびと自由にやらせてもらった」と建築家の更級氏。
 依頼主の信頼感と潔さが、建築家のもつ力を最大限に引き出し、「作品」であること以上にかけがえのない「住処」という永く住み継ぐに値する「宝」を、住まい手にもたらす要因となったことは間違いない。
▲不規則な土地の形状を生かした三角形の坪庭。隣地との目隠しに建てた砂壁がグリーンを引き立てる背景に。
▲太陽光発電パネルは最新モデルを採用。この家の特徴となる大きな片流れの屋根が、その性能を存分に引き出してくれる。
▲オリジナルのテレビボード。シンプルなデザインとしながらもグラデーションの引き出しでアクセントをもたせた。
▲玄関脇の目隠しされた一角にたっぷりサイズのシューズクローゼットを配置。
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[ Yさんご家族 ]
決め手

狭小住宅や変形土地の家の設計を手掛けており、実績があること。また施工例を見学した際に直接話してみて、感性の合致する度合いが高かったことも決め手になりました。


こだわり

シンプルで美しく、時間が経っても飽きのこない家であることと、メンテナンスが少なくてすみ、長持ちする家であること。また将来においても、利用価値の高い住まいであること、にこだわりました。

お気に入り

階段下の収納は、見た目以上に収納力があり、とても使いやすいです。また、坪庭を眺められる居間も、四季の移ろいを感じられて、家族のお気に入りの空間となっています。

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PLAN
平面図


設計のポイント

住んだ時の落ち着き感を意識し、和のくつろぎを取り入れた潔い空間を目指しました。
室内を一体空間とする中で隣接する和室と洋室のつながり方に違和感がでないよう配慮しています。
間仕切り建具のデザインを単純な格子とせずにピッチに変化をつけることでモダンな雰囲気が生まれ、床の樹種や色とも調和し、リビング側からの自然な繋がりを保つことができます。室内全体がおおらかにつながり、風と光が満ちる心地よい住まいとなったと思います。

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DATA


敷地面積・・・・・・・・  277.98㎡ (84.08坪)
延床面積・・・・・・・・  119.46㎡ (36.13坪)
1F面積・・・・・・・・  76.18㎡ (23.04坪)
2F面積・・・・・・・・  43.28㎡ (13.09坪)

工法/木造在来軸組工法 基礎/ベタ基礎 構造材/ヒノキ、スギ、マツ 断熱材/天井:高性能グラスウール200㎜、壁:高性能グラスウール100㎜、床:基礎断熱 主な外装仕上げ/屋根:ガルバリウム鋼板、外壁:モルタル下地・吹き付け塗装、一部櫛引左官仕上げ 主な内装仕上げ/床:信州産カラマツ(オスモ塗装) 開口部/樹脂製複層ガラスサッシ/YKK ap キッチン/トーヨーキッチン&リビング キッチン熱源/IHクッキングヒーター 給湯の種類/エコキュート 暖房の種類/電気式蓄熱暖房機器

■ 参考価格(完成引渡価格) 約2,600万円(税込)
※給排水工事・住宅設備・冷暖房・照明・太陽光発電システム・カーテン・造作家具・外構工事含む
※掲載価格については、2014年4月以降、変更される可能性があります。

●著作権について
このページに記載されている記事本文、写真等は「住まいNET信州」VOL.19より転載しています。
こちらの情報の著作権は、住まいづくりデザインセンター信州に帰属します。
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