ARCHITECT LEGACY

伸びやかに展開する家 松本市/N邸 家族構成/3人

家は四角形でなければならない。土地の敷地には平行であるべきだ。誰かが決めた「あたりまえ」を外してみたら家のカタチはもっともっと自由になって、暮らし方はもっともっと広がりはじめた。ようこそ、私たちが選んだスタンダードへ。

家は暮らしの「道具」。その可能性は無限に広がっている。

 あらかじめ手元に届いた平面図を見て、思わず首をかしげてしまった。家全体が大胆な台形で、それぞれの居室も一つとして長方形ではない。生活感よりもデザイン性重視の奇をてらった設計なのだろうかと、半信半疑で足を踏み入れた瞬間、タテヨコに伸びやかに広がる空間の「抜け」に圧倒された。
 玄関から一目で見渡せるワンフロア。リビングから奥のキッチンへと斜めに広がる形状が、視覚的にさらなる開放感をもたらす。縦へと目をやれば、2階分の天井高いっぱいのダイナミックな吹き抜け。高窓が切り取る絵のような青空からの光が、白い空間に反射し、室内を明るく浮かび上がらせる。
▲ ご主人の趣味は音楽。引越し後、真っ先にご自身で取り付けたという四方のスピーカーからの音は、 高い吹き抜けに共鳴し、美しく響く。 白い壁にプロジェクターで映したDVDを観賞するのもご夫妻の愉しみの一つ。
斜めに切ると風景が変わる。世界が広がる。
▲ 壁の一部を波形に切り抜いたのも、遊び心ある設計アイデア。人が立つとちょうど顔が覗くくらいの深さの切り込みが、1階と2階を緩やかに結び、気配や風の通り道にもなっている。
▲ 2階からリビングを見下ろす。床のフローリングには濃い色味のウォルナット材を使用。
「リビングを広く大きくというのが私たちのリクエストでしたが、ここまでの開放感を味わえるとは」と奥様が驚くのも納得の空間の広がりは、そもそも土地形状のデメリットから生まれた策。
「もともと北側には川が流れる台形の土地。南側正面にはやがて隣家が建つことも考慮して、視線をずらすようあえて斜めに裁断したのです」と更級建築士。その土地なりの最大限の可能性を引き出すことにかけて高い評価を得る氏の設計術は、まさに「空間設計の妙技」と呼びたくなる鮮やかさ。
「見た目の美しさに目が奪われがちですが、実際の生活面にも細かい配慮が行き届いているんです。先生のお宅にもお子さんがいるからか、子育てや家事において、暮らせば暮らすほど工夫されていることを実感できます」
 図面や外観からの想像を裏切るような立体的な広がりや、その室内空間に上質感を添える洗練されたインテリアーだけで終わらないのが〝更級イズム〟。そこに隠された真の設計哲学を味わえるのは、その家に暮らす人だけの特権だ。一瞬、胸をよぎった軽い羨望すら、高い天井が光の粒と一緒に吸収し、青い空へと解き放ってしまった。
▲ 北側デッキ。ガルバリウムとモルタルの硬質な素材で仕上げた外観は、中の明るさとは対照的。建物に対してデッキの板目をほんの少し傾けることで得られる視線の抜けや広がりは、ぜひ取り入れてみたいアイディアの一つ。
▲ キッチンの背面にあたる部分は、壁一面のワークセット(キッチン収納)。冷蔵庫や食器棚以外にも、細かな日常のものがすべて納まる天井高いっぱいの収納力は「片付けが苦手な私にはぴったり」と奥様も大満足。
▲ 浴室の向こうは壁に囲まれたデッキのため、人目を気にせず半露天気分を味わえる。冬は雪見風呂にも!
▲ 広々とした玄関。シューズクローク下部のライトがアクセントに。奥には外周りの道具やスノボなどをしまえるたっぷりとした多目的クロークもある。
▲ 子供部屋も十分な広さがあり、今はダブルベッドを置いて三人で寝ている。引き戸を開放すれば廊下と一体化してさらに大きく使うことも可能。
▲ 2階廊下部分も斜めの形状を生かしてカウンターや本棚を設置。一つの部屋のようなゆとりがある。
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[ Nさんご家族 ]
決め手

一言で言うと、コストパフォーマンスの高さです。限りある予算の中で大胆に、贅沢にデザインしてくれました。それでいて格好良さ、住みやすさにもこだわっており、そうした手を抜かない仕事ぶりが気に入って更級さんを選びました。


こだわり

主な要望は、広いリビング、開放的なお風呂、玄関に続く土間空間、バイク置き場。ただただシンプルに。我が家にとって必要のない物はどんどん削ぎ落としました。

お気に入り

リビング…大勢の友人を呼んでも食事ができ、子どもものびのびと遊べる大空間。オープンキッチンなので孤立しがちな主婦の居場所を皆で共有できます。 お風呂…一面がテラスに続く窓、その向こうには4mの外壁があるので内とも外とも言える開放感のあるお風呂になりました。ユニットではない置きバスも「格好いい」と皆に好評です。

感想

格好よさと住みやすさを両立させるのは簡単ではないと思います。この家は、平面図からは想像もできないほど、その2つが満たされていて、実際に訪れた人、生活している人にしかわからない心地良さを日々実感しています。
家族や友人皆が大空間で同じ時を共有できること。家だけではなく、それによってもたらされる時間が、我が家にとって貴重な財産となりました。

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PLAN
平面図


設計のポイント

市街地に近い立地に加えて、敷地は川による変形土地。近隣では大規模建設の工事予定があり、周辺環境の変化が想定できました。大きな外壁で内部空間をすっぽりと包み込むことで外界との距離感が生まれ、オープンな間取りでありながら、室内にはおどろくほど安心感があります。
「ここは家の中?外?」みたいな不思議な雰囲気もあって楽しくてカッコイイ、そんな理想的な家ができました。

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DATA


敷地面積・・・・・・・・  221.35㎡ (66.95坪)
延床面積・・・・・・・・  134.29㎡ (40.62坪)
1F面積・・・・・・・・  82.54㎡ (24.97坪)
2F面積・・・・・・・・  51.75㎡ (15.65坪)
デッキ面積・・・・・・・  21.53㎡ (6.51坪)

工法/木造在来軸組工法 基礎/ベタ基礎 構造材/ヒノキ、スギ、マツ 断熱材/天井:高性能グラスウール200㎜、壁:高性能グラスウール100㎜、床:基礎断熱 主な外装仕上げ/屋根:ガルバリウム鋼板葺き、外壁:ガルバリウム鋼板フラットタテ張り 一部:モルタル下地 左官仕上 主な内装仕上げ/床:オスモフローリングナチュラルウォルナット・カバ無垢材+オスモ塗装 キッチン/トーヨーキッチン&リビング キッチン熱源/IHクッキングヒーター バスルーム/造作バス 給湯の種類/エコキュート 暖房の種類/電気式蓄熱暖房機器

■ 参考価格(完成引渡価格) 約2,500万円(税込)
※給排水工事・住宅設備・暖房・照明・カーテン・造作家具・太陽光発電システム・外構工事含む
※掲載価格については、2014年4月以降、変更される可能性があります。

●著作権について
このページに記載されている記事本文、写真等は「住まいNET信州」VOL.20より転載しています。
こちらの情報の著作権は、住まいづくりデザインセンター信州に帰属します。
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