ARCHITECT LEGACY

家をステージに 中野市/E邸 家族構成/3人

家が、家族にとって毎日の暮らしの〝舞台〟なら、その舞台を、華やかに〝演出〟するのが建築家の仕事だと言えるのかもしれない。

帰宅するたびに「いい家だなあ」と嬉しくなるんです。

  E邸という〝舞台〟の印象的な見せ場は、扉を開けるなり用意されていた。
 エントランス正面には庭を眺めるピクチャーウィンドー。見上げれば、吹き抜けに面した羽目板張りの大きな一枚壁と、2階廊下をつなぐルーバーデッキ。1階東側には、暖色でまとめられたコージーなリビング。西側は対照的にモノトーンのクールな配色のダイニングキッチンへ――。一歩足を踏み入れただけで、視線の先にはいくつもの表情の異なるシーンが現れる。
「東西に長い敷地を生かして、一軒の家の中に雰囲気の違う空間を組み込みました。一日の流れにも変化が生まれ、この家で過ごす時間をいつまでも飽きずに楽しんでもらえるように」と話す演出家、ならぬ設計担当の更級氏。
▲ 玄関とエントランスは吹き抜けになっており、上部をルーバーデッキが渡る。ダイニングとの間にはフロアタイルの色の違いで視覚的な仕切りがあるほか、スライドドアで締め切ることも可能。
▲ 1階東南の角に設けたリビング。広さよりもこぢんまりした居心地のよさを優先させた。あえて低い位置に取った窓が重心を下げ室内に落ち着きをプラスしている。夜、この部屋で音楽を聴くのがご主人の楽しみ。
▲ 洗面化粧台の下に設置した蓄熱暖房機。床より一段低く掘り下げることで、各部屋の床下に温風を回せる仕組みになっている。
▲ スタイリッシュなデザイン性はもちろん、壁と床の透かしこみや窓枠をつけないなどの細かな造作へのこだわりが、全体の印象をシャープにしている。
 四季折々の庭の風景が一枚の絵のように映る大きな窓。絶妙な高さの外塀が外界からの視線を遮り、敷地の広さ以上の開放感をもたらす。ゆったりと設けたデッキは、夏にはハンモックをかけ、第二のリビングへと変身する。
「これまで住んでいた自宅は、働いて寝に帰る場所でしかありませんでした。この家ができてからは早くここに戻って来たいですし、住んで一年が過ぎても、玄関を開けるたびに何度でも『あ、いいなあ』と思えるんです」と顔をほころばすEさんご夫妻。家を建てるにあたって集めた資料が偶然にもすべて更級氏の施工例だったというほど惚れこんだ建築家による家。そのステージで、家族の暮らしという物語は、日々輝きを増しながら繰り返されてゆく。
▲ エントランスを上下から見たところ。壁面と梁や柱、開口部の位置が緻密に計算され組み合わされていることがわかる。
▲ 羽目板の壁の向こうはフリースペースとして使えるホール。2階を一つのプライベート空間ととらえ、仕切りなく広々と。衣類などの収納は寝室ではなく廊下に沿った壁面に。ウォークイン・クローゼットよりも見やすくて使いやすい。
▲ 外観はシンプルなベージュのモルタル。ガレージの屋根を支えるどっしりした梁と目隠しのルーバーに使った木材がアクセントになっている。
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PLAN
平面図


設計のポイント

敷地の形状や大きさなどの特性を生かして建物をつくることを常に心がけています。建物に付随する塀や駐車スペースなども建築と一体になるように敷地に合わせて計画し、見え方のバランスを重視しています。造成地なので、隣棟との間隔や、圧迫感なく外からの視線を遮蔽するなどプライバシーの確保にも気をつけています。ペット(室内犬)がいることから、清掃性の観点で、一つのフロアで床の素材を変えてみましたが、それが家の中で別空間にいるような感覚を生み、楽しい家にできたのではないかと思います。

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DATA


敷地面積・・・・・・・・  278.36㎡ (84.20坪)
延床面積・・・・・・・・  168.46㎡ (51.00坪)
1F面積・・・・・・・・  102.63㎡ (31.04坪)
2F面積・・・・・・・・  65.83㎡ (19.91坪)
デッキ面積・・・・・・・  14.00㎡ (4.23坪)

工法/木造在来軸組工法 基礎/ベタ基礎 構造材/ヒノキ・スギ・マツ 断熱材/天井:高性能グラスウール200㎜、壁:高性能グラスウール100㎜、床:基礎断熱仕様 主な外装仕上げ/屋根:ガルバリウム鋼板、外壁:モルタル下地吹き付け塗装 主な内装仕上げ/床:カバ無垢フローリング、フロアータイル キッチン/トーヨーキッチン&リビング キッチン熱源/IHクッキングヒーター 給湯の種類/エコキュート 暖房の種類/電気式蓄熱暖房機

●著作権について
このページに記載されている記事本文、写真等は「住まいNET信州」VOL.22より転載しています。
こちらの情報の著作権は、住まいづくりデザインセンター信州に帰属します。
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